システム障害対応の改善は、何故進まないのか?(第三部)

第二部「システム障害対応の改善は何故進まないのか?」では、私がシステム障害対応の改善を始める際、他部署を含めた部長層や保守・運用のリーダー層にヒアリングした結果から導き出した仮説をお話させていただきました。

野村が考える仮説

  1. システム障害をみんながすぐに忘れてしまう
  2. 関連システムが増えて改善が進みづらくなった
  3. 関連システムや顧客との運用設計ができてないと進まない

では、システム障害対応の改善が進まない理由は、本当にそこなのでしょうか。

本記事では、「システム障害対応の改善が必要と考えている」皆様へ
改善方法が進まない理由から実際にどう改善すべきかを提案しています。 

システム障害対応の改善が進まない真の原因は何か?

システム障害対応時に、顧客から「連絡が遅い」「連絡内容が足りない」って言われたことありせんか?

私も過去にシステム保守運用の業務をやっている中で真面目に、しっかり、対応しているにも関わらず、スピード感をもって、手を抜いてるわけではないのに、何度も同じ事を言われましたし、他の方が同じ事を言われ怒られているのを何度も見てきました。

システム障害は、顧客に影響を与え、困るユーザーがたくさんいる状況となる事が多いので、サービス提供者として責任をもっている顧客が、どうしても怒りのような感情を抱えしまうのはごもっともです。

ですが次回に向けて何かを改善したとしても、同じことを言われ続けている方が多いのではないでしょうか。
なぜ、言われ続けるのでしょうか?
これには、大きく見落としている点があると私は考えています。

1.実はあなたが自分の改善をいくら頑張っても改善されない!

システム障害発生時に何か顧客に連絡をすると、こんなこと言われたことありませんか?

  • 「こういう情報が欲しい」と言われて毎回振り回される
  • 「なんでもいいから早急に情報を回して」なんていわれる
  • 顧客の担当者が変わると、以前伺っていた情報から変わる

システム障害というものは、サービスやシステムが進化していき、時の経過とともに変化し、発生した時間帯や時間経過による状況変化もあるのが当たり前ですし、振り回されてしまう事は仕方ない事だと、あきらめていませんか?

多くの顧客は「稼ぐ方に力を注ぐのが最優先」であるため、商品企画・サービス企画・開発・製造・営業・流通・納品・販売が大事なのです。

会社の資源としてコストや人員を、システム障害対応に向けた改善に時間、コストを割いてはいません。
そのため、顧客もその場で迷いながら・考えながら情報を要求しています。

システム障害が発生したらその時の状況を考えながら、その時に最適なアクションを選択するために情報を要求します。
顧客は、システム障害の専門でもないですし、経験もたくさん積めるものでもないため、いい対応ができないのは仕方がないと思っています。
皆様の運用設計が原因ではなく、顧客の運用設計ができていないから改善しないのかもしれません。

2.システム障害対応は悪循環が続いている

その結果、顧客も焦りながら、迷いながら発言してしまうため「なんでもいいから情報が欲しい」とは本当は必要でない情報で突発的に「あの情報が欲しい」と言ってしまい、保守運用をしている皆様には「毎回違う情報を要求」された結果、ミスはできないというハイプレッシャーの中、試行錯誤し情報連携すると「連絡が遅い」「連絡内容が足りない」と怒られてしまいます。

少々脱線してしまいますが、怒るメカニズムとして、現在は一般にも広がり教育機関やプロスポーツ、ビジネスの場にも展開されている「アンガーマネジメント」の中では以下のように言われています。

怒りの裏には別の感情があり、不安、苛立ち、恐怖、寂しさ、困惑、といった感情は「一次感情」といわれる。
この一次感情がきっかけとなって湧き起こるのが「怒り」であり、怒りそのものは「二次感情」であるとされる。
しかし、「怒り」のみを表したり伝えてしまうことで、本来感じていた「一次感情」を理解されなかったり、自身でも気付かないといったケースがある。
そのため、「怒り」のみを表現していても、根本的な問題解決につながることが少ないとされる。 

また、「怒り」の原因となる「一次感情」が発生する根源は、自身が持つ価値観(~するのが当たり前、~すべき)と外れた事象にあると言われる。
まずは自身がどんな価値観を持っているのか、何を許せず、どこまで許容範囲なのかなどを把握することも、怒りをコントロールする上で重要となる。 

システム障害対応の場面では「不安」「苛立ち」「恐怖」「困惑」はつきものですよね。そしてその相手が顧客や関連システムなど関係者が多いと、もうどうしていいかわからなくなると思います。

話は戻りますが、顧客はシステム障害と、いざ相まみえた時に、「不安」「苛立ち」「恐怖」「困惑」の感情を抱いた状態で、何の目的でどんな情報が欲しいか、ハッキリとわかっていない状態で要求してしまいがちだと考えられます。
そのため「保守運用者がいくら頑張っても、相手の改善ができない限り改善が進まない」という悪循環に陥っていると考えます。

3.あなたも悪循環を起こしちゃっている可能性あり

悪循環が起きていることは伝わったのかもしれませんが、もしかしたらあなた自身も悪循環を起こしてしまっているかもしれません。

今までの話は、顧客とシステム保守運用(又はSIer等)をされる方など、ビジネス立場の関係構造上、買い手(顧客)の交渉力が強いと想定しており、顧客側が振り回してしまう側になりがちだと考えられます。

そのため立場が変わり、保守運用を実施している皆様が、使っているミドルウェアやサービスなどがある場合、そのサービス提供者に対して、あまり考えが整理できていないまま「毎回違う情報を要求」したり「なんでもいいから情報が欲しい」といったことはありませんでしょうか?

皆さま自身も立場が変われば、この悪循環の一旦を担ってしまっているのかもしれません。

では、どうすればいいのでしょうか?

ついに次回の第四部は完結編になります。

私もこんな経験したとか、こんな事言われたなどなど、どんな事でもコメントいただけますと幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。

引用

野村 浩司

金融系システムを中心に開発・保守・運用を6年実施、その後、事業部・社内改善を5年しており、大規模障害時は300人ほどの障害対応の統括を実施、事業部の故障数を30%削減などに取り組んだ。 他にも、原価削減はBPRで8000万/年、システム監視改善で3600万/年、申込運用改善で2500万/年など実績あり。

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野村 浩司

金融系システムを中心に開発・保守・運用を6年実施、その後、事業部・社内改善を5年しており、大規模障害時は300人ほどの障害対応の統括を実施、事業部の故障数を30%削減などに取り組んだ。 他にも、原価削減はBPRで8000万/年、システム監視改善で3600万/年、申込運用改善で2500万/年など実績あり。
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